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安岡 弘志
核磁気共鳴技術(岩波講座 物理の世界), 80 Pages, 2002/11
核磁気共鳴(NMR)は物質を微視的にしかも原子や分子、さらには、種々の物性や機能を醸し出している電子系の動的な情報をも研究できる強力な研究手段として発展し、現在では物理の分野のみならず工学や薬学,医学等の多くの分野で応用されている。特に、最近になって医学の分野で画期的な診断手法となった核磁気共鳴断層撮影法(MRI)はその顕著な例で、ガンの早期発見や従来のX線診断では不可能であった人体内部の画像化が可能となっている。物性物理の分野では、特に磁性や超伝導の起源の解明に威力を発揮しており、例えば高温超伝導酸化物をはじめとする新しい物質系を舞台として、その卓越した微視的実験情報がそれぞれの物性解明の核心に迫ろうとしている。このように、NMR法は固体電子物性の研究のみならず科学技術全体の進展に輝かしい足跡を残してきている。本分冊では、NMRの原理と物理情報を概説した後、磁性体,超伝導体への応用を中心として、最近の研究を紹介しながら、NMR法の特徴を浮き彫りにする。